犬の耳

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読んだ本、聴いた音楽、観た映画などを忘れないための「いぬのみみ」です。くらしのお役立ち情報もお伝えします。

アンドレイ・タルコフスキー『惑星ソラリス』


[あらすじ] 

人間は過去の出来事や故人の想い出を意識の奥底にしまいこんできた。太陽系とは別の銀河系に属する惑星ソラリスの理性をもつ海は、想像を絶する独自の理性をもつ超知性体であり、その海は人間の潜在意識を実在する形に変換する不思議な能力をもち、人間の理性とのコミュニケーションを拒み続けてきた。その謎を解くためにソラリスの海に浮かぶ宇宙ステーションに到着した心理学者は、目の前に10年も前に自殺した妻が突然に現れて驚く…。

 

この間、初めてタルコフスキーの『ストーカー』を観てすっかり魅了されてしまったのだが、その次に観たこの『惑星ソラリス』もまた素晴らしかった。作中眠くなるとの前評判だったが、私には全くそんなことはなかった。むしろ比較されることの多いキューブリックの『2001年宇宙の旅』よりこちらのほうがはるかに良いと思った。

 

タルコフスキーの何が気に入ったのか。まず、その映像美である。音楽もないまま静かにカメラを回し続ける描写がとても素晴らしい。彼の作品の「音」がまた心地よい。すぐに爆発して壮大な音楽が流れるハリウッド映画とはまた違う良さがある。ドストエフスキーといい、ショスタコビッチといい、彼といい、まったく「ロシア的」である。彼らは多くを語らないことで、雄弁に物語る。

 

私はタルコフスキーが放つ雰囲気、その奥にある哲学の虜になってしまった。結局のところ、彼にとってソラリスはただの舞台装置に過ぎないのだろう。

 

惑星ソラリス Blu-ray 新装版

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