犬の耳

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犬の耳

読んだ本、聴いた音楽、観た映画などを忘れないための「いぬのみみ」です

フェデリコ・フェリーニ『8 1/2』

映画

[あらすじ]

「人生はお祭りだ、一緒にすごそう」
温泉地に逗留している43歳の映画監督グイド(マルチェロ・マストロヤンニ)。
この地で新作の撮影を控えているのだが、冷え切った妻との関係……公私ともども悩みの多い彼の脳裏には幼少時の記憶やまだ見ぬ夢の美少女の幻影が現れては消える。
巨大な宇宙船発射台の屋外セットを前に、ストレスが頂点に達したグイドは……。

イタリアの誇る世界的巨匠フェデリコ・フェリーニ最大の野心作にして最高傑作。 

 

制作、そして人生に煮詰まった映画監督の主人公が、温泉地に滞在しながら自らの願望、幻想、現実の間を彷徨う。若い私ははじめこの映画を見たとき、作中に描写されたミドルエイジクライシスに対して「ああ、この年代も大変なんだな」「なんて身勝手な男だ」と他人事のように思った。しかし、ミドルエイジクライシスの種のようなものは、当然若い私の中にもあるわけである。この映画を見終わったあと、ふとした日常生活の瞬間に本作を思い出すことが幾度もあり、その度にこの映画の意味を解きほぐし、自らの心の暗部と向き合うことになった。

 

フェリーニは、この作品で人間存在の闇のようなものを描ききったのではないか、と私は思う。それは、どちらかといえば救いようのない方のものだろう。「どちらかといえば」なので、作中ではまだ現実と幻想の交差の中で微妙な均衡を保っている。しかしラストシーン、主人公はマイナスの方向に舵を切ったように結末が暗示される。

 

今後私が生きていく中で、何度も本作を思い出すことになると思う。その度に、この作品の暗号を解読するのかもしれない。

 

 

8 1/2 普及版 [DVD]

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