犬の耳

読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

犬の耳

読んだ本、聴いた音楽、観た映画などを忘れないための「いぬのみみ」です

ピエール・ジュネ『アメリ』

映画

[あらすじ]

空想好きの小さな女の子アメリは、そのまま大人になってモンマルトルのカフェで働いている。
彼女の好きなことはクレーム・ブリュレのカリカリの焼き目をスプーンで壊すこと、周りの人たちの人生を今よりちょっとだけ幸せにする小さな悪戯をしかけること。
彼女の人生は、スピード写真コレクターのニノとの出会いによって、ある日突然、混乱をきたす。
人を幸せにするどころか、優しい笑顔のニノにアメリは恋心を打ち明けることが出来ない。
アメリの最も苦手な現実との対決、不器用な恋に必要なのは、ほんの少しの勇気。

 

最近、映画を何本も見ていたが、その中で印象に残ったのは本作『アメリ』である。鮮やかな画面、独特の言い回しによる人物描写、簡潔で洗練された物語構成。行間から想像させるという点は小説的とも言えるし、映像の特性をうまく活用している点では映画的な映画だ。

 

本作を観た直後は、オドレイ・トトゥ演じるアメリがかわいいというより不気味に感じた。恋をした男ニノに対して、まるでストーカーのように振る舞う。彼女の立ち振る舞いは奇行としか言えない。他の登場人物達もどこかズレている。

 

空想好きなアメリは、ニノに恋心を抱きながらも現実世界のニノと接触することを注意深く避ける。自身の妄想を傷つけないよう細心の注意を払いながら彼に近づいていく。しかし、男を自分のアパルトマンの部屋まで呼ぶところまではいっても、彼女は自分の部屋の扉を開けることができない。そんな中、近所に住む、数少ない理解者である絵描きの老人が、アメリに扉を開けるよう諭す。

 

物語の核心は、空想好きなアメリが想像の城を出て「現実」と対決するシーンである。彼女の決断が、幸せを掴む鍵となる。映画を観終わってから、私は日常生活の中でこのシーンの意味をゆっくりと咀嚼した。いい作品は、噛めば噛むほど味が出る。

 

自身の恋愛事情を鑑みながら、夏の夜に本作を見てもいいのかもしれない。

 

アメリ [Blu-ray]

アメリ [Blu-ray]