犬の耳

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犬の耳

読んだ本、聴いた音楽、観た映画などを忘れないための「いぬのみみ」です

アルベール・カミュ『異邦人』

読書

[あらすじ]

母の死の翌日海水浴に行き、女と関係を結び、映画をみて笑いころげ、友人の女出入りに関係して人を殺害し、動機について「太陽のせい」と答える。判決は死刑であったが、自分は幸福であると確信し、処刑の日に大勢の見物人が憎悪の叫びをあげて迎えてくれることだけを望む。通常の論理的な一貫性が失われている男ムルソーを主人公に、理性や人間性の不合理を追求したカミュの代表作。 

 

あらすじを読むだけでも衝撃的である。内容はもっと衝撃的だ。

 

一見、支離滅裂で倫理観に反しているとしか思えないような主人公。だが読書を通してムルソーの主観的世界を覗けば、彼の『思想』にはある種の一貫性があるように思えてくる。自身の感覚に素直な主人公の中に誠実さを垣間見る。

 

 この作品は、描写が綺麗である。中でも「殺害の動機」として主人公ムルソーがあげた浜辺で太陽を仰ぎ見るシーンはきらきらしていて暖かい。文章は美しくて透明だ。作品を通して「倦怠感」あるいは「気だるさ」が伝わって来る。

ムルソーのような生き方、考え方がいいことなのか、私にはわからない。しかしこの本を読んで、私は肩の荷がおりたような気がした。

 

善悪の倫理観の枠組みが揺らいだ現代に生きる我々にとって、予言的な本であることは間違いない。

 

異邦人 (新潮文庫)

異邦人 (新潮文庫)