ヘミングウェイ『老人と海』
[あらすじ]
キューバの老漁夫サンチャゴは、長い不漁にもめげず、小舟に乗り、たった一人で出漁する。残りわずかな餌に想像を絶する巨大なカジキマグロがかかった。4日にわたる死闘ののち老人は勝ったが、帰途サメに襲われ、舟にくくりつけた獲物はみるみる食いちぎられてゆく……。徹底した外面描写を用い、大魚を相手に雄々しく闘う老人の姿を通して自然の厳粛さと人間の勇気を謳う名作。
初めてこの本を読んだのは小学生の頃、読書感想文のためだった。課題図書か何かだったと思う。老漁夫がただひたすら海上で漁をしながら、独白するだけの物語を読んで、「なんてつまらない本なんだ」と感想を抱いたのを覚えている。
大人になった今、ふとこの本の存在を思い出して再び手に取ってみた。今は漁師町に住んでいるので、「漁師」という存在の理解の一助になればと思ったからだ。
『老人と海』の読後感は、小学生の頃とはまるで違った。やはり読む時期というのは重要であるらしい。たったひとりで小舟に乗り、何日間もカジキマグロとの死闘を勝ち抜くも、戦利品であるマグロのほとんどすべてを追尾してきたサメに奪われる老人。
描写は細部まで精巧に作り込まれている。淡々と進む物語の向こう側に、ヘミングウェイの視線が見える。彼はある一点、遠い一点を迷うことなく見ている。
簡潔で無駄がなく、一気に読んでしまえる本。空いた休日の午後にオススメ。